こんにちは、くろたろうです。
第六回のテーマは経営者のための銀行選びです。銀行の状況を理解して、いい銀行と付き合いましょう。
銀行シリーズ
第一回:あなたの取引銀行大丈夫? 経済が好調な今だからリスクを考える
第二回:銀行の健全性をまとめてみた 金融機関の安全性はどこを見ればいいの?
第三回:都銀、地銀、信金は何が違うの? 金融機関の種類と存在意義
第四回:個人の取引銀行選び 複数行取引で便利さと身近さを確保しよう
第五回:個人のATMと振込を無料にする 銀行の特典をフル活用しよう
第六回:経営者の取引銀行選び 取引銀行に求めるのは金利で良いのですか?
取引銀行、どう決めた?
皆さんは取引銀行をどのように決めましたか?
- 支店が近いから。
- 税理士や仲間の紹介で。
- 創業の時からのつきあいなので。
- 金利が安いので。
など、いろいろな理由があると思います。
しかし、その理由で決めた銀行が本当に企業経営に役立っていますか?
八方ふさがりの銀行業界
私が営業をしていた時の話です。新規の営業先に行った際に、「うちの会社には銀行の営業が頻繁に来るよ。取引の無いところまで来るから困っている。今日はまだ昼だというのにもう3つくらい来たよ。」と言われたことがあります。
今日の銀行は激しい貸出競争により金利が取れなくなりました。それでも以前は融資をしなくとも国債を買っていれば何とかなったのですが、今はマイナス金利の導入で国債すらも0%前後、時にはマイナス金利となることがあります。
銀行には融資以外にも利益を確保する手段として手数料ビジネスや有価証券運用があります。しかし、手数料ビジネスは賃貸需要の低いところへのアパート建築あっせんなど顧客の利益になっているか疑問なものが多くあったため、金融庁が目を光らせています(「顧客本位の業務運営」といわれています)。東日本銀行では不正な手数料ビジネスがなされていました。
不当な手数料、実体なき登記に融資 東日本銀の不正
2018/7/13 21:26 日本経済新聞より抜粋(記事中の…は略した部分)金融庁が…東日本銀行に業務改善命令を出した。同行は自らの収益を増やすために顧客に負担を強いるという「顧客本位」と正反対の運営をしていた。…東日本銀によると全83店舗のうち69店で根拠が不明確な融資実行手数料を受け取っていた。顧客への説明がなかったり、目的が分からなかったりしたものが、計997件で4億6000万円に達する。…手数料を取っていた先には、低利で借りやすくするために地方自治体などが利子補給している中小零細企業が多数、含まれているという。自治体との協定で手数料の徴収が禁じられている制度融資を使った融資先からも取っていた。…
次は有価証券運用です。銀行は余ったお金を運用しているのですが、国債は超低金利、株もいつ暴落するかわからないし、リスクを取りすぎると金融庁から目を付けられます。実際に栃木銀行は米国債の運用で大損失を計上しています。
栃木銀、4~12月期赤字転落 リーマン・ショック以来
2019/1/31 22:00 日本経済新聞より抜粋(記事中の…は略した部分)栃木銀行…が2億3700万円の赤字(前年同期は37億円の黒字)だった。…含み損を抱えた外債投信を売却したのに伴い35億円の損失を計上したのが響いた。…単体の経常利益は91%減の3億5500万円。…融資による収益や手数料収入の増加に努める。
有価証券運用も高度なリスク管理が必要で、難しいのです。
すると銀行はもう融資をするしかありません。正直、こんな会社によく貸すな、と思えるような企業にまで低金利で大量の資金が行き渡っています。もう「金融緩和」ではなく「信用緩和」ともいえる状況です。
このような大量の資金供給は長くとも返済期間3年以内、多くは短期資金(返済期間1年以内の融資)で行われています。今後景気後退期に入ると低ランクの企業からは一斉に融資の引き上げが起きると思われます。引き揚げ方は短期資金の折り返しをしないという方法で行われるでしょう。リスクに見合った金利を受け取っていないので、銀行の体力がつかず貸し続けることができないのです。
何故いらないカネを借りるのか?
お金が忙しくて融資を受けたい企業もあれば、まったく資金需要が無い優良企業もたくさんあります。しかし、お金のいらないであろう優良な中小・中堅企業でも取引銀行との関係が切れないように融資取引だけは継続しているところが多くあります。銀行にとってはとても良いお客さんです。
では何故金利を払うだけの不要な借入をしているのでしょうか?それは常に良い業績は続かない事や業績悪化時には銀行の融資やネットワークに頼りたいという思惑があるからです。本当に頼りになるメインバンクは必要な運転資金を緊急融資したり、売上を上げるために取引先を紹介してくれたり、銀行自身が商品を購入したり、M&Aや投資などで支援してくれる企業をネットワークから呼んで来たり、経営改善計画をコンサルに成り代わって行ったりと本当に色々な事をします。時には経営者と一緒に悩み、汗を流すこともあります。
取引銀行と良い関係を作れていると銀行は色々な提案を持ってきます。困った時にできる範囲での便宜も図ってくれたりします。このような対応は誰に対しても行っているものではありません。VIP待遇を受けている企業ほど銀行や銀行の担当者との付き合いがうまいのです。
社長、その銀行はあなたが困っているときに本当に助けてくれますか?
業績が良い時は企業が捨てる銀行と付き合う銀行を選びます。一方で業績が悪い時は銀行が捨てるか救うかを選びます。「晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」という言葉があります。あなたの会社はもしもの時に傘を貸してもらえるのでしょうか?
というか、そもそも、その取引銀行はいざという時に「助ける力」や「提案力」、「身を切る気概」を持っている銀行なのでしょうか?
「金融緩和」と「信用緩和」でお金が十分に行き渡っている今だからこそ考えなければならない問題だと私は考えます。
「当社の経営が危機に陥った時に何をしてくれますか?」
このような問いを担当者やその上席などにしてみてはいかがでしょうか。この問いにどのように答えるかで銀行や支店のスタンスや支援する体制の有無を図ることができます。
もし担当者の上席や支店長に会ったことが無いのであれば会うべきです。そしてこのような問いをしてみてください。
そして、
「融資以外に経営に役立つご提案を何か1つでいいので頂けないでしょうか。」
と要望してみましょう。
- どのような提案を持ってくるか。
- どれくらいのスピード感を持って対応するか。
- きちんと提案のためのヒアリングをしてくるか。
- その後も継続して提案やヒアリングをしてくるか。
上記の点を確認してみましょう。
ヒアリングにはできるだけ真摯に答え、時間もある程度とってあげましょう。
銀行が銀行の融資目標のためだけに来ているのか、会社のために何かしたいという思いを持って来ているのかが判断できると思います。
まとめ
- 取引銀行はきちんと選びましょう。
- 銀行は八方ふさがりの状態です。
- 銀行との良い付き合いは経営にも良い影響を与えます。
- 本当に取引しがいのある銀行かを質問することで試してみましょう。
- 会社のことを考えてくれる銀行や担当者(上席含む)と付き合いましょう。
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