コンビニのATMで有名なセブン銀行(証券コード:8410)ですが株価が低迷しています。買い時なのか?なぜ下がっているのか?今後の注目すべき点について同じ業界の業界人として考えていきます。
決算発表後低迷している株価
決算発表後、セブン銀行の株価は低空飛行が続いており、10年スパンで見ても、1年スパンで見ても低い水準で推移しています。
2024年5月17日の終値は267.5円となっています。
セブン銀行の概要と業績
主力事業
事業は以下3つのセグメントに分かれています。
- 国内事業(銀行業その他)
- クレジットカード・電子マネー事業
- 海外事業セグメント
柱となっているのは国内のATMをはじめとする国内の銀行事業です。海外事業は米国、フィリピン、インドネシアに展開してATM事業を展開しています。クレジット・電子マネーはnanaco(ナナコ)やセブンカード(2023年7月1日付で連結子会社化)が主となっています。
業績や株主還元(配当など)
業績は良くも悪くもないです。直近期はセブンカードを子会社化したこともあって売上高も利益も前期比では増加しています。
株主還元方針は配当性向40%以上を維持するとのことで、ここ5年は11円を維持しています。
規模
- 2024年3月期
預金残高5,983億円
融資残高 443億円
この規模は銀行としては決して大きいとは言えません。地方銀行で言うと下位の規模です。
しかし、ATMを中心とした手数料を収益の柱としていることから伝統的な銀行とはビジネスモデルが違います。マイナス金利解除(金利上昇)の追い風はあまりないと思ってよいでしょう。
特筆すべきビジネスモデル
ATM
日本全国に独自のATMネットワークを構築したことが強みです。今は銀行にとってATMの維持・設置・管理はお荷物業務の一つであり、コストと労力がかかるばかりで利益は生みません。最近は銀行のATM運営を受託するサービスをセブン銀行は拡大しており、今後はもっとたくさんの銀行で検討されていくと思います。銀行にとっては多少のお金を払ってでも外出ししたい業務です。
恐らくATMについての外注先として受託できるのはセブン銀行とゆうちょ銀行くらいしかありません。今後、この業務への参入があり得るのはイオン銀行とローソン銀行くらいではないでしょうか。全国ネットワークと多額の設備投資ができないと絶対にできない業務です。セブン銀行は圧倒的に強いです。
+Connect
個人的にはかなり注目しています。
ATMで住所変更や在留期限確認などはマネロン対応(AML/CFT)にもつながっており、このマネロン対応は銀行業界の大きな課題です。とても複雑かつ広範な対応が必要なので、単独での対応はかなり厳しくなってきているように感じます。なぜならマネロン対応は銀行にノウハウが乏しい、手間がかかる、ミスが許されないという業務だからです。
セブン銀行はこれについてもソリューションを提供しています。
最近、銀行から取引目的の確認とかいうハガキやメールが届いたことはありませんか?生活費決済とか事業費決済とかを申告するやつです。ああいうものの受託もしています。
また、ATMで本人確認や住所変更ができるので、セブンとしては手数料収入の増加につながります。
今はローンの申込や本人確認程度ですが、今後はどんどんサービスが広がっていくことでしょう。銀行だけでなく役所の業務も請け負えるものが多数あると思います。
こういう業務はATMを使わずスマホでも出来るように思えますが、ATMの場合はもっと様々な要素から本人確認や原本確認を出来るので、スマホよりも信頼性が上です。スマホで起きる操作性の問題(OSの種類や個別の環境で使えないなど)やセキュリティの問題(通信やソフトウェアの脆弱性)なども優位性があるので、窓口レス・来店レスをより一層に進められるものと思います。
課題と思われること
+Connectのようにサービスの幅が広がっているので、ATMバージョンアップや入替負担も重くのしかかっています。
セブン銀行は減価償却費の負担が相当重いです。
計画では来年は減価償却費が+54億円となっており、減価償却費総額は240億円となっています。2023年3月期と比べると72億円の増加です。経常収益の約2割が減価償却費(設備投資)で消えていっていることになります。
減価償却費の増加要因は新型ATMへの入替が主因と思われます。2025年には全台入れ替え完了予定となっています。今導入している第4世代ATMは2019年9月にリリースされており、時代の変化もあったことから使える年数はそう長くはないでしょう。そうなるとまた多額の投資を必要とするので利益を圧迫していくものと思われます。+コネクトなどの新サービスが投資に見合った収益を上げられるかどうかが焦点となっていくでしょう。
セブン銀行は海外事業も展開しているので、古いATM(第3世代)の活用状況は気になるところです。償却が終わったATMなので、海外で活用できれば高収益を支える循環が出来上がります。海外ではまだ市民権を得ていないと思うので、まずはATMネットワークを構築する必要があります。その際に償却済のATMは強い武器となるはずです。
残念ながらそのあたりの開示は見当たらないので、良く分かりません。
まとめ
ATMという商材はキャッシュレス社会になりつつある状況では衰退事業のように思えます。しかし、キャッシュレス社会の実現は一朝一夕では達成不可能です。本当にATMがいらない時代になるには今後20年、30年という時間が必要でしょう。セブン銀行はATM以外の事業も育ってきており、セブンカードの子会社のほか、最近は小口の融資業務も成長してきています。収益源は多様化していくものと思われ、そのへんの地方銀行よりかは将来性は高いものと思っています。
個人的には長期的な視点で買ってもいい銘柄だと思っています。
※投資は自己責任でお願いします。
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