今回は普段あまり意識する事が少ないであろう「銀行」をテーマに連載記事を書きます。
知っているようで知らない銀行について考える機会になれば幸いです。
銀行シリーズ
第一回:あなたの銀行大丈夫? 先行き不透明な今、預金保険制度を確認しよう(ペイオフ解禁)
第二回:銀行の健全性をまとめてみた 金融機関の安全性はどこを見ればいいの?
第三回:都銀、地銀、信金は何が違うの? 金融機関の種類と存在意義
第四回:個人の取引銀行選び 複数行取引で便利さと身近さを確保しよう
第五回:個人のATMと振込を無料にする 銀行の特典をフル活用しよう
第六回:経営者の取引銀行選び 取引銀行に求めるのは金利で良いのですか?
番外編:銀行員を手なずける方法 担当者と仲良くすると良い事もある
その銀行、大丈夫?
「私はメガバンクに預けているから大丈夫!」と思っていませんか?
多くの人が安心を求めて有名銀行と、便利さを求めてネット銀行と取引をしています。しかし、本当に「有名な銀行=安心な銀行」、「便利な銀行=良い銀行」という方程式は成り立ちません。
バブル崩壊で最も消滅率が高かったのは大手銀行
平成元年からの業態別の減少数を数えたら以下の表になりました。
都市銀行 | 長期信用銀行 | 金融機関全体 | |
---|---|---|---|
平成元年 | 13 | 3 | 1,080 |
平成10年 | 9 | 3 | 933 |
平成20年 | 6 | 0 | 607 |
平成29年 | 5 | 0 | 565 |
元年比減少率 | 61% | 100% | 47% |
※金融機関全体は預金保険対象金融機関数。 都市銀、信託銀、地銀、信金、信組、労金が入っています。 |
平成元年に13行あった都市銀行も現在は5行しか残っていません。減少率で考えると61%と最も減少した金融機関が都市銀行なのです。興銀や長銀、日債銀に代表された長期信用銀行は全て消滅しました。大きいから安心だというのは歴史が否定しています。
※都市銀行・・・銀行のうち全国的にまたは数地方にまたがる広域的営業基盤を持つ銀行のこと。
預金保険機構の保護対象
ペイオフ解禁により預金保護は元本1千万円とその利息までになりました。今一度、何が保護されて、何が保護されないかを確認しましょう。
保護される金融機関
以下の金融機関が保護されます。全ての銀行が保護されるわけではありません。下記金融機関でも海外支店は対象外です。政府系金融機関や外国銀行の在日支店(日本の支店)も対象外です。
- 銀行
- 長期信用銀行
- 信用金庫
- 信用組合
- 労働金庫
- 商工組合中央金庫
- 信金中央金庫
- 全国信用協同組合連合会
- 労働金庫連合会
※農林中央金庫、農業協同組合(JA)、漁業協同組合等は「農水産業協同組合貯金保険制度」という別の制度で保護されています。
保護対象の預金(どんな預金でも保護されるわけではない)
よく1000万円までしか保護されないと勘違いされている方がいますが、当座預金や決済性普通預金といった利息の付かない預金は全額保護されます。一方で、外貨預金などは保護対象の金融機関でも一切保護されません。
全額保護される預金
- 当座預金
- 決済性普通預金
当座預金も決済性普通預金も利息の付かない預金です。
利息の付かない預金は現在でも全額保護されます。
元本1000万円まで保護される預金
利息のつく預金は1000万円まで保護されます。元本1000万円と破綻日までの利息が保護されます。
よく勘違いされている方がいますが、保護は1金融機関につき1000万円です。違う銀行に預金を分散させれば意味がありますが、同じ銀行で口座を分けても意味はありません。
- 普通預金
- 定期預金
- 定期積金
- 元本補てん契約のある金銭信託(ビッグなどの貸付信託を含みます)
- 金融債(保護預り専用商品に限ります)など
1円も保護されない預金
- 外貨預金
- 譲渡性預金
- 金融債(募集債及び保護預り契約が終了したもの)など
よく勘違いされている方がいますが、外貨預金は保護対象ではありませんので注意しましょう。
保護されない預金は返ってくるか?
銀行が破綻したら、保護されない預金は1円も返ってこないのでしょうか?
仮に1500万円を定期預金で預けていたら、1000万円まで保護される預金なので、元本1,000万円を超える500万円の部分と破綻日以降の利息については、保護されません。
結論は、一部が返ってくる可能性はあります。全額返ってくる可能性は極めて低いです(払えるならば破綻しない)。
破綻した金融機関の財産の状況に応じ、倒産手続によって弁済金・配当金として支払われることがあります。つまり銀行の残った財産を皆に預金額(債権額)に応じて平等に配分するのです。
残った財産があれば一部が返金され、何も財産が無ければ1円も返ってきません。
2010年に破たんした「日本振興銀行」は1000万円を超す部分の払い戻しは一律58%であったそうです。なお、この払い戻し率が決まるまでに約4年間の歳月がかかったそうです。
預金保険機構が発動した金融機関の破綻一覧
近年の破たんは平成23年の日本振興銀行のみです。平成12年~平成15年にかけてはバタバタと倒れていきました。
金融機関名 | 営業譲渡日 | 営業譲渡先 |
---|---|---|
国民銀行 | 平成12年 | 八千代銀行 |
幸福銀行 | 平成13年 | 関西さわやか銀行 |
東京相和銀行 | 平成13年 | 東京スター銀行 |
なみはや銀行 | 平成13年 | 大和銀行 |
近畿大阪銀行 | ||
新潟中央銀行 | 平成13年 | 大光銀行 |
第四銀行 | ||
東日本銀行 | ||
東和銀行 | ||
八十二銀行 | ||
群馬銀行 | ||
日南信用金庫 | 平成13年 | 南郷信用金庫 |
信用組合関西興銀 | 平成14年 | 近畿産業信用組合 |
整理回収機構 | ||
朝銀東京信用組合 | 平成14年 | ハナ信用組合 |
整理回収機構 | ||
相互信用金庫 | 平成14年 | 大阪信用金庫 |
石川銀行 | 平成15年 | 北陸銀行 |
北國銀行 | ||
富山第一銀行 | ||
金沢信用金庫 | ||
能登信用金庫 | ||
中部銀行 | 平成15年 | 清水銀行 |
静岡中央銀行 | ||
東京スター銀行 | ||
日本振興銀行 | 平成23年 | イオン銀行 |
まとめ
- 破綻すると保護対象外の預金が返ってこないかもしれない
- しかも払い戻しに数か月~数年単位の時間がかかる(預金を引き出せない)
- バブル崩壊後、61%の都市銀行が消滅(大手だからと言って安心ではない)
日本振興銀行の場合、払い戻し率が決まるまでに4年かかりました。その弁済率も58%と約4割の預金が消えてなくなりました。払い戻し率が決まる前に払い戻すことが出来ました(概算払といいます)。概算払で払い戻す場合の払い戻し率(概算払率)は25%でした。概算払でも支払いまで1~2週間はかかったようです。
たとえ明日必要なお金でも、破たんすれば降ろせなくなってしまいます。大事な預金を一行に預けておくのはリスクが高いといえるでしょう。ましてや大きいから安心と安易に預けると痛い目を見ることになるかもしれません。
第二回では金融機関の健全性をまとめます。自分の取引銀行の健全性を見てみましょう。
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