不動産融資の動向 金融機関の審査スタンスは厳格に

経営と金融
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不動産投資と不動産融資は切っても切れない関係です。金融機関の不動産融資へのスタンスが不動産相場を決めるといっても過言ではないほど両者は密接にかかわっています。私自身が金融機関に勤めているので、そこから見える不動産融資の現状をつづりたいと思います。

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こんにちは、くろたろうです。 金融機関の融資姿勢が極めて厳しくなっています。メガバンクはもちろん、地銀・信金までもが確実に手を引いています。以前、金融機関の融資スタンスが厳格化したことを記事にしましたが、今は厳格化に加えて極めて消極な姿勢が...

不動産融資を取り巻く環境

高騰する不動産価格

不動産の価格は高値圏で推移しています。海外からも日本の不動産は割安であるとの判断のもと、海外から多額の資金が流入してきています。中古マンションの価格も右肩上がりで上昇しており、なかなか天井が見えてきません。不動産価格は今はとても高いと言えます。

米ラサールなど外資ファンド、日本の不動産投資拡大、高値でも低金利で妙味。
2018/08/20 日本経済新聞 朝刊 1ページ

外資の不動産ファンドが日本での投資を一段と拡大する。(略)
日本を含め世界の主要都市の不動産価格は高騰しているが、国内では資金の借入金利が低く投資に対する利益を得やすいとみている。
ラサールは不動産に特化した運用大手で世界の資産残高は約6兆6千億円。日本での資産残高は4千億~5千億円とみられる。今後2年で大都市圏の賃貸住宅や商業施設、物流施設を中心に運用規模を4~5割広げる。(略)
資金の借入金利と投資利回りの差が大きければ収益を得られる。(略)ニューヨークや香港でこの差が1%未満だが、東京は2・9%ある。(略)

この記事に記載されている通り、借入金利が日本は激安なために割安に映っています。借金をして不動産を買えば儲かるのです。長引く超低金利が悪影響を及ぼしている一例と言えるでしょう。海外マネーが都心の不動産価格を支えているといっても過言ではありません。日本の金利が上昇したり海外で資金を引き上げなければならない事件が起きると一斉に値崩れするリスクは常にあります。

不正が横行する不動産融資

スルガ銀行をはじめ、東日本銀行などの銀行内部で不適切な融資がされていました。また、TATERUなどの大手不動産業者までもが書類を偽造して西京銀行を騙して融資を引き出していました。TATERU以外の不動産業者の書類の偽装ではりそな銀行、三井住友銀行なども被害を受けているようです。各金融機関は自身のところでは起きていないかとナーバスになっています。おそらく不動産融資に積極的な銀行は多かれ少なかれ改ざんの被害にはあっているでしょう。銀行はもう誰も信じられないので、被害に遭わないように審査を厳格にしていく事でしょう。

金融庁の不動産融資に対する指導スタンス

以下の記事からもわかるように不動産融資については数年前から厳しい目線を金融庁は向けていました。

金融庁、不動産投資への過剰融資を抑制、銀行の審査体制を点検、個人向け、不良債権化防ぐ。
2018/09/26 日本経済新聞 朝刊 7ページ

金融庁は地方銀行などを対象に投資用不動産向け融資の実態調査に乗り出す。超低金利や不動産市況の好転を背景に、賃貸用不動産の経営を始める会社員らが急増。返済能力を超えた過剰な融資をしていないか、銀行の審査体制を中心に検査・監督で厳しく点検し、行きすぎを防ぐ。(略)
金融庁はここ数年、相続税の節税対策として広がった貸家の建築資金融資をめぐり、監視の目を強めてきた。賃貸需要が少ない地域で物件を建てさせたり、空室増で想定した家賃収入を得られなかったりする例が増えている。ローンを返済できず土地・建物を手放す事例もある。(略)
18事務年度では、土地所有者の節税対策に絡んだ融資だけでなく、土地を持たず、自己資金も乏しい会社員ら個人への融資にも照準を合わせる。(略)
会社員らは土地と建物の代金をほぼ全額借り入れで調達するため、借入額が億円単位に膨らみやすい。家賃収入で返済できるうちはよいが、入居が減れば給与や金融資産で穴埋めせざるを得ず、経営は不安定になる。
銀行の担保評価のあり方も点検する。(略)金融庁は同様の過剰な融資を黙認すれば、銀行の不良債権が膨らみかねないとみている。(略)
日本全体で貸家への融資残高は23兆円弱。リーマン危機直後の09年と比べて2割増え、地銀のシェアは6割強を占める。(略)スルガ銀のような不適切融資が他の地銀でも広がっていれば、金融システムは大きなリスクを抱えていることになる。

金融庁は銀行の不動産融資が適切な格好でなされているか点検もしており、銀行は安易に不動産融資を推進することは出来ない状況にあります。

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金融機関の融資スタンス

業態や個別金融機関で不動産融資に対するスタンスは大きく異なります。

メガバンク・準メガバンクの融資スタンス

メガバンク三行は新規先(取引実績の無いお客さん)の受付はかなり高いハードルを設けているようです。2016年頃に担保評価基準を厳しくしたとのうわさが流れ、一足先に厳しい審査を始めていました。今も変わらず厳しい基準で融資審査を行っている印象を持ちます。特に土地だけの購入案件など具体的な設備を伴わない案件(駐車場や本社等の隣地購入など)に関しては融資を行わなくなったメガバンクもあるようです。

りそな銀行は2017年頃まではかなり積極的な融資対応をしていました。毎日のように耳にする金融機関でした。最近は新規先の受付基準を引き上げるとともに少し厳しい見方をしているようです。ただ、既存先(取引実績の有るお客さん)や懇意にしているアパート建築業者経由の紹介案件については従来とあまり変わらない審査をしている印象を受けます。

地方銀行の融資スタンス

2016年頃にメガバンクが不動産融資を絞った後、不動産融資の主役に躍り出たのが地方銀行です。
大手地方銀行は1%を切る超低金利でフルローンを組むなど積極的な融資を行っていました。
千葉銀行、横浜銀行、静岡銀行、スルガ銀行、東日本銀行、千葉興業銀行、東和銀行などの名前を2年~3年くらい前はよく耳にしましたが、最近は聞くことがほとんどなくなりました。
メガバンク同様、地方銀行も2018年初旬頃から融資スタンスが厳しくなったように感じます。

千葉銀行は2016年頃に知り合いを通じて私自身の審査をしてもらったところフルローンで2億円は出ると言われましたが今は出ないようです(借りとけばよかった…)。超低金利の借換提案や新規融資を2017年中盤頃までは積極的に行っていた印象ですが最近はおとなしいようです。
横浜銀行は耐用年数通りで普通の審査をしているようです。東日本銀行と経営統合をする前後は借換提案や新規融資を積極的に行っていたのにあまり聞かなくなりました。
静岡銀行はスルガ銀行のようにボロ物件に長期間・高金利で融資をしています。その勢いは数年前と比較しても変わっていないようです。もともと好んで静岡銀行を使う人も少なかったと思いますが…。少し異色の存在です。
スルガ銀行はみなさんご存知の通り不正融資問題で炎上しています。新規融資もストップしており、今後不動産融資を行うのかどうかについても決まっていません。
東日本銀行も横浜銀行と統合する前後にプロジェクト融資(仕入した不動産の付加価値を高めた上で販売する商品用不動産融資)でよく聞きました。この銀行も不適切融資問題以降はあまり聞かなくなりました。
千葉興業銀行は2018年初旬頃に低金利・フルローンで不動産融資を増やしていたようです。知り合いの間ではこの時期にそんなことして大丈夫なのか?と噂になっていました。
東和銀行は2015年頃に低金利・フルローン対応をしてくれるという話をよく聞きました。最近は全然聞かなくなりました。

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その他地域金融機関の融資スタンス

地方銀行をあまり聞かなくなったと思ったら次に聞こえてきたのは信用金庫、信用組合です。
東京都内の信用金庫は23庫あり、大きいところは中堅地銀並み(預金残高3兆円強)、小さいところは下位地銀未満(預金残高1000億円強)と規模感はバラバラなのですが、ほとんどの信金で不動産融資残高が増えていると聞きました。信組も同様、たまに名前を聞くことが増えてきました。ただし金融機関の規模が小さい為、10億円を超える規模の大きい不動産融資の場面ではほとんど聞くことは有りません。とある信組は融資上限が数億円と聞いたことがあります。経営体力も盤石とはいいがたいので、多額のお金が動く不動産融資でメガバンクや地方銀行の代わりの担い手としては十分な機能を果たせないと思われます。

その他金融機関の融資スタンス

オリックス銀行は賃貸用不動産融資を今でも積極的に行っているようです。ただし融資総額上限や年収、金利などのバーが有るので、当てはまる案件はそんなに多くは無いようです。

日本政策金融公庫は支店によって対応が異なりますが、不動産向け融資をかなり絞っているようです。以前は要件に当てはまれば区分マンションなどは積極的に融資をしていましたが、現在はお店ごとの不動産向け融資比率などが厳しくみられるようで、積極的ではありません。

最近よく聞くのがノンバンクです。相変わらずサラリーマン向けの区分マンション投資などの小口不動産融資については積極的に対応をしているようです。住友系のノンバンクは一棟ものや地方物件まで融資をしているようです。

各金融機関のスタンスからみえる不動産投資の未来

不動産融資の担い手はメガバンク⇒地方銀行⇒信金・信組等⇒その他金融機関、ノンバンクと移ってきています。担い手がいなくなってきました。金融機関の審査スタンスはこれからもっと厳しくなると思われます。そもそも昔は自己資金を2割から3割充当した上でそれなりの資産を持っている人だけの特別な融資が賃貸不動産融資でした。昔の審査が厳しかった理由はバブル崩壊で金融機関自身がつぶれたことにあります。土地の価格は半値以下に簡単に下落するのです。
今ではアパートローンという言葉が市民権を得ており、一般人でも知っている言葉となりました。それは一概に悪い事とは言えませんが、悪い印象の言葉にならないかが心配です。
不動産投資に密接に関わる不動産融資の状況が厳しい状況なので不動産価格は下落するものと思われます。ただし、金余りで投資先が無い現状があるので金融政策を注視することが重要です。

 

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