最近下火になっていたスルガ銀行問題ですが、最近スルガの行ったアパート・マンション融資(アパマン融資)の被害者団体が活動しているようです。
スルガ銀行不正融資…福岡支店前で被害者団体が抗議
スルガ銀行の不正融資問題で ~略~ 抗議活動を行いました。~略~ 全国からおよそ150人が集まり、~略~ 書類の改ざんで本来の物件の価値以上の高額融資を受けた結果、返済が困難に陥ったとして、救済を求めています。~略~ 九州朝日放送-yahooニュースより
最初は「かぼちゃの馬車」事件だった
かぼちゃの馬車事件とは?
この事件は「スマートデイズ」という不動産会社が販売していた「かぼちゃの馬車」という名の女性専用シェアハウスをめぐる事件でした。
スルガ銀行とスマートデイズが協力し、ほぼ収益の上がらないシェアハウスを投資家にあの手この手でスマートデイズが販売し、スルガ銀行が購入資金の融資を行っていたというものでした。7~8%の高い利回りで家賃保証(サブリース)し、家賃保証があるから返済は大丈夫=リスクは無いというロジックのもと、素人投資家をターゲットにして販売していたそうです。
スルガの第三者委員会の調査報告書からの不正内容を改めて見ると異常さがわかります。
- 購入不動産の家賃を高く偽装、賃貸契約書も偽装、ついでに売買価格も偽装
- お金は無いし、払ってないけどお金を払ったことにして手付金領収書を偽装
- 営業部門の役員が審査部門の部長を(心理的に)ボコして稟議を決裁させていた
- 実は空室だけど部屋にカーテンをかけて住んでいるように偽装して調査した人を騙す
- 審査部から出入り禁止にされた業者を名前を変えたり迂回して再度取り込んでいた
詳しくは↓
本当に騙されてたの?
こんなことを書くと被害者たちは激怒するでしょうが、本当に騙されていたのでしょうか?
自分自身で最低限の注意を払っていたのかな、という疑問がわきます。私自身もこの事件が起きる前にシェアハウス案件の融資相談を何回か受けたことがあります。内容を見ると大抵は家賃保証(利回り)が7~8%くらいついているだけの「ゴミ物件」でした。具体的には駅から遠い(徒歩10分以上)郊外物件、最寄り駅も駅力の弱い駅、5畳程度の狭小木造シェアハウス、家賃は5~6万円(普通の物件の1Kが借りれる価格)、建築費も高めといった感じです。誰が住むのでしょうか?誰も住まなければ当然家賃保証も短期間で打ち切られます。打ち切ることを前提にして土地代金や建築費を高くして利益を出すビジネスモデルにしか見えませんでした。
路線価やヤフー不動産で付近の土地の相場・実勢価格を調べればこちらも5分で「価格が高い」と分かったでしょう。
スルガ銀行は当時3.50~4.50%と「金利が高い」ので、ほかの銀行にもっと金利を安くできないか相談に行けば「まともな所からは借りられない」ということにも気が付けたでしょう。
金利が高い意味(金利が高い=リスクが高いから)はネットで調べれば5分で分かったでしょう。
物件を見に行けば、この家賃で自分なら住みたいと思うか?という判断もできたことでしょう。
物件の近くの不動産屋に行って物件の資料を見せて、いくらなら貸せるか聞けば「そんな家賃じゃ募集しても集まらないよ」と、貸せない事実に気が付けたでしょう。
かぼちゃの馬車事件は異例の解決
スルガ銀行のシェアハウス不正に関しては、被害者とスルガ銀行との間で和解が成立しています。「投資は自己責任」という原則からすれば異例の解決といえます。
和解の内容は融資金と担保を相殺するというもの。簡単に言うと、「購入した不動産をスルガ銀行に渡せば借金を帳消しにするよ」、というものでした。
仮に借金が1億円あり、購入した不動産を売って8千万円だったとすると2千万円の借金が残ってしまいますが、その分はスルガ銀行が負担するよ、というものです。事実上の借金帳消しといえるでしょう。
ちゃんと投資を勉強している人からしたら、在りえないくらい好条件の解決だと感じると思いますし、被害者たちに同情もできないでしょう。これは無責任投資を救済した悪例だと思います。
こんな記事が現代ビジネスからは出ていました。
スルガ銀行「かぼちゃの馬車」事件、借金帳消しは甘すぎやしないか
新たに問題となったアパマン融資問題とは?
アパマン融資とは、普通に賃貸用のアパートやマンションを買うためにした融資の問題です。アパート・マンションを略してアパマンといいます。シェアハウスのように1部屋をシェアするような特殊なものではなく、1人(1家族)に対して1Kとか2LDKのような部屋を貸すイメージの不動産への融資です。
被害者団体によるアパマン被害の内容
被害者弁護団のサイトがあります。そこに被害者の声として被害の内容が掲載されています。
たくさん声が載っているのですが、中を見ると共通しているのは、1.当初の資料が偽装されていて、2.スルガも大丈夫と言っていたから安心して投資して、3.結果的に不動産投資は失敗していて、4.そもそもスルガが融資しなければこんなことにはならなかった、という流れのものが多かったです。
良く分からないのが、「誰が」資料を偽装したの?ということです。第三者が改ざんして銀行に提出していたら、スルガ銀行も被害者になります。借入した被害者も知っていて偽装書類を銀行に提出していたら、被害者は業者と結託して銀行をだました加害者になります。そこがボヤっとしていて良く分かりません。この偽装をスルガがやったという証明ができないと弁護団が勝つのは難しいのかなと思います(正直、証明できてたらとっくに勝利していると思います)。もしスルガ銀行がやっていたら責任は問えると思います。もし被害者がやっていたら責任を問われる側になると思います。
アパマン不正で責任追及は無理がある?
弁護団は裁判で戦って叩きのめすというよりも、抗議活動をして世間的な話題・問題にして和解を引き出すというのがやり方のようです。しかし、今となってはほとぼりも冷めて、ほぼ話題にもなりません。スマートデイズのシェアハウスは新しいビジネスモデルの側面もあり、そのシェアハウス事業の将来性評価が難しかったのは事実なので、その部分が考慮されたかもしれません。しかし、アパマン投資はただの不動産投資であり、事例もたくさんあります。それこそ少し調べればいくらでも相場は調べられます。「いい物件と言われたから買った」のに「結果的に損したから保証しろ!」というのは難しいでしょう。結果に責任を持つのが投資というものです。責任を持ちたくなければ投資をしなければいいのです。この点においては本当に被害者の落ち度が無く、詐欺にあっていたと認められない限りは、自己責任を逃れるのは難しいのではないかと思います。
また、本来メインで責められるべきは売った業者や仲介した不動産業者です。銀行は付属品でしかありません。
銀行業界で流れたかぼちゃの馬車解決の裏側(噂)
これは噂ですが、燃え上がってしまったスルガ批判を抑えるため、金融庁のメンツを保つ&事件へのケジメをつけるため、金融庁より「和解しろ」と言われていたそうです。それでやむなくスルガ銀行は和解をしたという噂がありました。スルガ銀行としてはすべて個別対応して、和解したり裁判することもできましたからね。今回のアパマン問題はこのような圧力は働かないでしょうから、同じような解決は特に難しいと思われます。
投資は自己責任?
投資は自己責任とよく言われます。意思能力の弱った高齢者をだましてとりあえず印鑑を押させて投資商品を売りつけるような行為は犯罪です。
しかし、不勉強ゆえに安易に投資をしたら(結果的に)騙されたというのは意味が異なると思います。現物の不動産投資をするのならば不動産の勉強はするべきだし、色々な人に能動的に話を聞きに行くことが必要です。また、現物不動産から生まれる所得は「不動産所得」であり、立派な事業です。
変なトラブルに巻き込まれないためにも「わからないものには投資をしない」というルールを持って生きるのも大事なのだと思います。
投資は自己責任か?
いや、人生そのものが自己責任なんだと思います。他人を責めても何も変わりませんからね。
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